ホーム > Q&A > Q.銀行折衝(融資交渉)で注意すべき点は何ですか?
Q.銀行折衝(融資交渉)で注意すべき点は何ですか?

A

まずは融資審査をする銀行の審査のツボを徹底的に理解しましょう。そして必要書類を事前に万全に準備して、審査しやすい(読みやすい)ようにして提出する事で融資認可の確率は格段に向上します。銀行員にとっていかに「楽な客」になるかがポイントです。
 

多くの経営者にお聞きすると、「銀行との折衝にとても気を使う」という方が多いのが印象的です。もちろん、銀行から融資を受けられるかどうかによって、企業経営、資金繰りに重大な影響があるわけですから、無理もありません。しかしながら元銀行員の立場で言わせていただくと、過敏になる必要は全くありません。きちんと事前準備をしておきさえすれば、金融機関は恐れるに足らずです。

例えば、資金調達(融資)を例にすると、

銀行からお金を借りるために、必要な事前準備とはなんでしょうか?
それは、唯一無二の絶対原則。

必要書類を事前に万全に準備して、審査しやすい(読みやすい)ようにして提出する事

これに尽きます。
大手都市銀行の担当者であれば、一人で100~150社の会社を担当していることは普通のことです。想像以上に多忙なのです。数ある融資先の中で、銀行員の印象に残り、やる気にさせ、かつ説得力のある交渉をし、融資を得るためにも、「手間をかけない、読みやすい書類」を提出するのが一番です。

もし不備が多い、不足書類もある、読みにくい資料だとしたら、それを読み解く銀行員の労力は天を仰ぐほどになり、その不備の連絡だけでも銀行員にとっては無駄な時間となり、書類がすべて揃うまでもなく「融資謝絶」ということもあります。いかに手間がかからない「楽な客」と感じてもらえるかが鍵なのです。

従って、「たかが必要書類」ではなく、「必要書類の整備こそ全て」の意気込みで準備しましょう。

さらに詳しく知りたい方へ、格付けについてお話しましょう。
融資の可否判断は「格付け」と「信用」で決まります。

「格付け」制度とは?
現在の銀行の融資審査は、決算書の数字を基にした「格付け」でおおよその融資スタンスが決まります。
格付けは以下の表のとおりです。ランクが下に行くほど融資条件は悪くなります。

格付け

内 容

銀行の姿勢

正常先

債務履行に問題がない会社

積極的

要注意先

業績が低調または不安定、財務内容に問題があり、今後注意を要する会社

保証協会付なら前向きだが、プロパーでの融資は厳しい

要管理先

要注意先の中でも、貸出条件、債務履行に問題のある会社(リスケ先など)

回収方針

破綻懸念先

経営難の状況であり、経営破たんに陥る可能性がある会社

融資対象外

実質破綻先

深刻な経営難の状況であり、再建の見通しが立たないなど、経営破たんに陥る可能性が高いと判断される会社

破綻先

法的・形式的な経営破たんの状況がみられる会社

格付けはどうやって決まるのか?(B/S編)
銀行員は、会社から提出された貸借対照表(B/S)を見て、その会社の実質的な自己資本がいくらなのかをはじき出します。不良資産については容赦なく資産から除外して再計算します。その詳細および格付けを左右するポイントを科目ごと以下のとおりです。

勘定科目

審査のポイント

現預金

極力多く保有する。月商の何か月分が手元にあるのかが見られます。「預金」なら多いほうが良いですが、「現金」が月商の2か月分以上あると、逆に社長個人のお金と公私混同が疑われたり、粉飾リスクを気にするので、手元「現金」が多い理由を説明することが望ましい。

売掛金

売掛金が焦げ付いていないか、過度に長い売掛サイトになっていないか、黒字決算にするために売上を前倒しで計上していないかをチェックします。ずっと動いていない売掛先は「焦げ付き」(不良債権)として「含み損失」として差し引きます。もしこの「焦げ付き」があると、全体的にそれ以外の科目のチェックも厳しめになります。なるべく不良債権を減らし、または不良債権ではないことを銀行員に説明しましょう。

棚卸資産

同業平均と比較して過度に「在庫」を抱えていないか。もし過度に多い場合は「不良在庫」として資産から除外します。「個別の事情」がある場合にはきちんと説明しないと、実際の資産価値より低く評価されます。極力余分な在庫は持たないように気を付けます。

買掛金

売掛サイトと比較して、過度に支払いサイトが短く、資金繰りに問題が生じないか、支払いに遅れがないか、がチェックされます。

仮払金・立替金・貸付金・投資等

銀行員が嫌う典型的な「4つの科目」です。「不良資産の宝庫」と考えていることが多いです。銀行はこれらの科目は最初から資産価値があるとは思っていません。「仮払金」と「立替金」はたいていの場合、社長・役員の飲食費等の「使途不明金」と判断され、資産から「含み損失」として差し引かれます。「貸付金」は社長個人や社員・友人への貸し出しで、「定期的な返済実績」が無い限り「回収不能」と判断され、差し引かれます。「投資等」は、「借入金」で投資する懸念であり、将来の資産性が読めないという面でも、銀行員は非常に嫌がります。  この4科目については、社長のポケットマネーを使ってでも決算時期だけでもいいので、減らしておくことをお勧めします。

不動産

建物は適正に減価償却がされているか。本業と無関係の土地は時価評価されているか。別荘などの贅沢資産は「定性評価」(信用)でマイナス評価される。

有価証券

時価評価されているか。債務超過会社の株は資産価値無しと評価。

繰延資産

創業費等、適正な期間・金額で償却されているか

未払金

家賃、法定福利費など未払いが無いか

借入金

総資産対比、借入金割合が高くないか

資本の部

業績、業歴と照らして、内部留保が蓄積されているか

格付けはどうやって決まるのか?(P/L編)
銀行員が損益計算書(P/L)を審査するポイントをまとめると以下のとおりです。

銀行員がP/Lを見る際のポイント

営業利益は黒字か?

赤字なら本業がダメだったということを意味し、生命保険の解約返戻金を使って最終利益を黒字にしても意味が無い。今後業績を回復し、黒字にするプランを説明できるか。

減価償却は適正に行っているか?

減価償却が適正にされずに黒字になっても評価されない。むしろ「不正をする会社」と評価が下がる。固定資産台帳で厳密に確認する。

赤字は一過性か?

赤字になった原因は「退職金」や「貸倒処理」等の一過性のものか? 一過性かを説明できれば問題なし。

営業利益>支払利息になっているか?

借入利息は、営業利益でまかなうのが原則。黒字でもこの式にあてはまっているか?

雑収入のおかげで黒字か?

本業以外の保険の解約金や、不動産売却、税金の還付などの「一過性の利益は、銀行は考慮しない。不動産賃貸収入等は「定期収入」として考慮される。

「信用」(定性要因)」はどう決まるか?
決算書の上記のような「格付け(定量要因)」のアプローチのほかに、数字には表れない、社長および会社の特性、事業基盤の部分からも評価されます。
これらを加点・減点方式にて点数を算出し、「信用」(定性要因)」として、財務内容の「格付け」と合わせて判定を行います。

1)社長はどんな人物か。
社長本人の履歴、人間性です。どんなに資金繰りが安定している会社でも、社長がお金にルーズなら返済を延滞します。また、どんなに資金繰りが厳しく、経営状況が悪くても、しっかりとした社長なら絶対に延滞はありません。
ここでは数字では読み取れない「定性的な審査」をする事になります。銀行員が「社長と面談したい」と言ってきた場合には、この定性評価をしようとしているに違いはありません。銀行員の心象が一番大事ですが、それ以外に、主に以下が確認されます。
a.過去に自己破産歴や倒産歴はないか。
b.会社のお金と自分のお金を公私混同していないか。
会社から借りているお金がないか?別荘やベンツなど、事業に関係ない資産を過度に散財して保有していないか? など社長の「金銭感覚」をチェックしています。
c.社長が高齢の場合、後継者がいるか
中小企業の社長は、実質「会社と運命共同体」と見られます。その為、代表者が高齢である場合は特に「後継者の存在」をチェックします。

2)それ以外にこんなところも減点対象となります
a.過去に返済の延滞がある
b.必要書類をあまり出したがらない
c.営業基盤が乏しい
d.社内がギクシャクしている

「格付け」と「信用」を上げるにはどうしたらいいか

ポイントは5つです。まずは、これまで見てきた、B/SとP/Lの中身、つまり「財務」を地道に改善していくことが一番の早道です。

1) 営業利益を上げる
節税ばかりに気を取られずに、収益を確保して内部留保を高める。つまり本業の収益を追求することです。

2)資産を健全化する
代表者の資産などで増資を行い、不良資産があれば、資産リストラを図りましょう。

3) 財務の透明性を保つ
財務内容の透明性を図るためには、本業以外の資金が流出すること(「仮払金(立替金)」「貸付金」「投資」)を減らし、本業以外の資産形成も会社のお金では避けることです。

4)普段から自社のアピールを行う
もっとも簡単で、すぐにできることは、普段から自社の特性および実態を銀行員に伝える努力を行うことです。

5) 社長の資質や事業基盤を強化する
返済日や書類の提出期限等の「約束」は必ず守る、といった基本的なことや、会社の数字に強くなる、ということがあげられます。また、仕入先、販売先を複合化し、事業基盤を安定化させることで、銀行の安心感=信用 がアップします。

KAMでは、上記のような必要書類の準備、作成、定性評価のアドバイス等を全面的にバックアップしています。
銀行は独特な組織です。まずは銀行員が求めていることをしっかり見極めて、それに答える力を身につけてください。
銀行員も人間ですから、やはり熱意を持って自社の良さ、返済の見通しをしっかり伝えることができれば、自然と「この社長のためなら頑張ろう」という気になる。そういう気を起こさせる交渉をしていただきたいと思います。
ぜひ自分の会社をもう一回見つめ直して、自社の良さは何だったのか、会社をどう成長させていくべきかを考えていただき、今までの取引銀行はもちろんのこと、今まで取引のない銀行にもチャレンジしてみてください。